シークレット・シークレット













じりじりと焼けるようだった。


昼下がり、彼と自分以外は他の誰もいない、真っ直ぐに細く続く小学校の帰り道。あまりの暑さに世界は眩み、蝉だけが騒ぎ立てていた。
そんな中、熱いアスファルトの上の逃げ水を遠目に見て、追いかけてはしゃいだのを覚えている。


道脇に自転車を止めて、笑いながら。




















”シークレット・シークレット”








































「なあ、楊ゼン。今から出て来れるか?」


携帯電話から聞こえた声は聞き慣れたもの。
夜になってもまだ蒸し暑い真夏。日付けも変わろうとした時刻、唐突にかかって来た電話は幼馴染みからだった。














三日月は随分と高い位置にあった。
からからと、乗るのを止めて降りた自転車の車輪が回る。
駅から離れた住宅街の夜は、昼間に比べて嘘のように静かで、暗い。
待ち合わせ場所はそんな住宅街の中にあった。


「楊ゼン!こっちだ」


夜の為、元気だが小さめに呼び掛ける声がする方を見ると、小柄な二つ年上の幼馴染みの望が手を振って笑っている。
待ち合わせた場所はなんの変哲もない公園の近く――小さい頃、二人でよく遊んだ場所だった。
楊ゼンが家から自転車に乗って10分ほどかかるそこに着くと、呼び出した本人はとうに着いていたらしく、サイダー水のペットボトルの中身を半分くらいにさせて街灯のついた電信柱に寄り掛かっていた。
暑いのう、と手で顔を仰ぐ顔はひどく童顔で、さらに言うと身長も低めで、いつ見ても年上には見えないと楊ゼンは胸の内だけで呟く。


「あれ、歩いてきたんですか?」
「ああ。暑いけど散歩がてら、近いし。にしても久しぶりだな、どれくらい会ってなかったか?」
「そうですね。新学期が始まる前だから…三ヶ月以上は会ってなかったんじゃないですか?」
「そうか。なんかあっという間だのう。でも元気そうでなによりだよ」
「あなたも元気そうでなにより、ですよ」


会ったのが久しぶりでも気まずくなることはなく、会話は弾む。お互いが会いたい時に会って、遊んで、話す。
楊ゼンと望は昔からそういう付き合いだった。
二つ年が違っていても親同士の仲がよかったこともあり、物心がつく前からお互いの家をよく行き来していた。放課後は毎日のように一緒に遊んで、まるで本当の兄弟のように育った。
現在は高校が別れた為、昔ほど一緒に行動することはなくなったが、こうやって会えば昔と何も変わらない。
普段会っている学校の友人達よりも気兼ねなく付き合える、所謂、家族のようなものだった。


「それよりも…どうしたんですか?望。こんな時間に呼び出して」
「あ、そうだった。おぬし、知っておるか?あの公民館が取り壊されるって」
「公民館って…、僕らが小さい頃よく遊んでいたあそこの公民館ですか?」
「そうだよ。老朽化のため取り壊されて、新しい建物が建つそうだ」


”あそこの公民館”とは、今夜待ち合わせた場所の傍にある公園からも近く、二人にとっては思い出深い場所である。
それは戦後すぐに建てられた古い、全面が白い外壁の二階建ての建物で、普通の民家の何倍もの面積を持ちながらも住宅街の中に紛れ込むようにして建っていた。
それを見かけても今となっては行くことはないし、”公民館”という響きさえ日常生活の中に置いては既に懐かしい。
ただ、何の変哲もないただの公民館だとしても、小さい頃は学校とは違う、その古びた大きな建物が何故かとてつもなく魅力的に見えたものだ。
楊ゼンは、小学生の頃、冒険好きの望と一緒に何度も入りこんでは探検したことを思い出して、目を伏せた。


「そっか…あそこ、なくなるんですね。ちょっと…さみしいですね」
「な?わしもそう思ってたら、おぬしと一度、親には内緒で夜に忍び込んで遊んだことを思い出したのだ。だから…ほら、取り壊される前に、な?」
「…って、まさかあなたまた忍び込むつもりじゃ…」
「つもりに決まっておるだろうが。だからおぬしを呼び出したのだ」
「あなた、自分の歳考えて下さいよ…」
「まだ高校三年生だよ、若い若い」


かかか、と悪そうに笑う幼馴染みに楊ゼンは溜め息をつく。
昔から望は悪戯が好きだった。
思い返せば、無茶なことをやらかそうとする望を見兼ねて止めようとする楊ゼン、という図がパターン化していた。
しかし結局は強引に楊ゼンも悪戯につき合わされ、結果、それが学校の先生やこういった公民館の係員にばれては二人でしょっ中怒られていたのだ。
あれから何年も経って、当時望より低かった楊ゼンの身長も伸びて、随分と追い越しても。楊ゼンにとって望はいつまでもあの頃のままの”親分”的な存在であり、どうしたって敵わない立場だった。望が機嫌を損ねると色々と面倒くさいことになるのが経験則的にわかっていた、というのもある。


「まさか、おぬし怖いのか?」
「何言ってるんですか。怖いわけないでしょう」
「よく言うわ。昔夜に忍び込んだ時、探検していたらおぬし怖がってわしの後ろにずっとくっついておったではないか」
「あれはあなたが必要以上に脅したからじゃないですか」
「脅されて怖がってる時点でアウトだろ」


かわいかったのう、あの時のおぬし、とにやにやと笑う顔からは意地の悪さが見て取れる。
確かに小さい頃、夜に忍びこんだ時彼の背中にずっと貼り付いていたのは事実だ。事実だ、けれども、10歳にも満たない子供が懐中電灯一本で他に誰もいない真っ暗な中を探検する恐怖はどれぐらいのものだろうか。
開き直るが普通の子供なら怖い。怖くない方が異常なのだ。
そう思っても、駄目だ、彼に口で勝てた試しなどない、と楊ゼンは早々に言い合いを切り上げた。こういう言い合いをした時は大体最後には話が噛み合わなくなる。


「いいですよ、もう。もとからこっちの意見なんて聞いちゃいないですもんね…」
「おい、何回溜息ついてるのだおぬし。怖くないなら行くぞ。…ほら、おぬしが乗らんとわしが乗れぬだろーが」
止めてあった自転車まで駆け寄ると、望は飲みかけのサイダーを前方の籠に入れ、サドルをぺしぺしと叩いて早くしろと楊ゼンを見上げた。
公民館は今いるところからそれほど遠くはなくても、わりと急な坂道の上にあった。
後ろに乗せろという望の意図を察して、楊ゼンの口元が、ひくりと引き攣る。


「…あなた、ここに来るのに散歩がてら歩いてきたとか言ってましたけど、公民館まで自分で漕ぐのがめんどくさくて自転車乗ってこなかったんでしょう」
「あたりまえだろ」
こんなに暑いのにさらに汗掻きたくない、と平然と言うなり、自転車の浮いている後ろの車輪に爪先を掛けて、本来漕ぐべき方向とは反対の方向へと回す。勢いよく車輪が回って、からからと音を立てた。自転車の二人乗りを促す際に車輪を回すのは、小学生の頃からの望の癖だった。


「あー、ちょっと、それ行儀悪いって言ってるでしょう。二人乗りだって本当は危ないんですからね」
「あはは、おぬしは相変わらずお母さんみたいだな」
やっぱり噛み合っていない。楊ゼンがそう告げると、おぬしは細かいからと望は笑う。
今日一番の大きな溜息を吐いて、それでも仕方ないと楊ゼンは思った。望の楽しそうな満面の笑顔を見ると、例え振り回されていたとしても、それがどうでもよくなってくる気がするのは事実なので、これはもう仕方がない。極力、望の笑った顔以外の顔は見たくなかった。


「どうせ細かいですよ。ったくもう、行きますよ」
「よしよし拗ねるな、あとでジュースかアイス奢ってやるから」
「あ、その言葉忘れないで下さいよ、絶対ですからね」


サドルを跨ぐと、すぐに後ろにそう重くもない重みが加わる。暑い、と言いながら腰に両腕が回ったのを確認してから、ペダルを漕ぐ足に力を入れる。ぐん、と前に進む動きに勢いがつくと、生温かい風が肌を撫ぜた。




















公民館は、さきほど待ち合わせた公園の裏にあった。
林を切り開いた中にある、どれだけ続くのか、という急な坂を登っていくと、夜目にもうっすらと白い、古びているとわかる大きな建物が見えてくる。
入口は学校に似ていて、黒い鉄でできた柵があり、その前で自転車を止めて降りた。
お互い小さい頃過ごした勝手知ったる場所である。
先に柵に手をかけて登り始めた望を見ながら、楊ゼンは周囲に注意を払って誰かこないか様子を見る。
がしゃ、がしゃん、と静かな空間に鉄の柵が立てるどこか懐かしい音に、純粋に今の状況を楽しむ気持ちになるのに時間はかからなかった。
柵を乗り越えた望に続いて柵を乗り越えると、少し先で望は楽しげに手招きをする。


「楊ゼン!まずあっちに行こう!」


柵を越えると、すぐに公民館に隣接している駐車場があった。
この駐車場も小さい頃は鬼ごっこなどをしてよく遊んだ場所である。今の季節、一緒に紙飛行機を飛ばしたり、シャボン玉を吹いて遊んだりしたこともあった。
車がゆうに二十台ほど留められるコンクリートの駐車場には、今の時間車は一台もない。


「うわー懐かしいのう!」
「望、ちょっとは待って下さいよ!」
その広さに走り出した望を楊ゼンが追うと、望は駐車場の端の方に何か見つけたようで、ぴたりと走るのを止める。


「楊ゼン、あれ」
「何ですか?」


細い指が差し示す先を見ると、駐車場の端に段ボールがいくつか重なっている。
段ボールに書かれているのは、わかる人にはわかる用度品のメーカー名。それは小さい頃にも見たことのある風景だった。納品された用度品が公民館の中に片付けられる前に、駐車場に置かれていることが時々あった。


「見ろ!相変わらずずさんな管理をしているぞ、ここ」
「ほんと、今もこのままだなんて…すごいですね」
雨が降ったらどうするんでしょうね、等と楊ゼンが呟いている間に望は段ボールまで駆け寄ると、その中の一つの段ボールを取って開けはじめる。
「え、ちょっと望何やってんですか!」
「なに、ちょっとだけ拝借するだけだよ」
にやりと悪い顔をして望が取り出したものは白とピンク色のチョークだった。
「どうせたくさんあってもろくに使われないで長い間倉庫に眠っておるのだ、使われた方がチョーク冥利につきるというものであろう」
「また変な理屈立てて…」
「たまにはいいだろこういうのも。おぬしは普段、気にすることが細かいんだから」
言い終わらないうちに望はその場にしゃがむと鼻で歌いながら、コンクリートの地面に大きく線を描いていく。
みるみるうちに地面に咲いていく白とピンクの花。
ぼんやりとした灯りの街灯の下、そこだけが花畑のように染まって明るくなった。
「はは、夏なのに春みたいだな!」
「ちょっと。チューリップとか描かないで下さいよ。向日葵とかでしょう今の季節なら」
「白とピンクのチョークで無理言うな。ったくほんとにおぬしは生真面目っつーかなんか固いっつーか…」
「季節やあるべきものを大切にするとか言ってほしいですね」
「いや、なんかそれ違うだろ。ってなにおぬしもしっかりチョーク握っておるのだ。止めときながら描く気満々ではないか」
「ここまであなたが描いてたらもう止めても意味ないでしょう。せっかくだから僕の上手な絵を見せてあげますよ」
「おぬし言ってることめちゃくちゃだぞ!」


本気で笑いながら二人でコンクリートに絵を描いて、楊ゼンは、小さい頃に思いを馳せる。
望と二人でくだらないことを本気で笑い合いながら、他愛もないことを繰り返すのが楽しくて仕方がなくて、それが”日常”だった。何をしても、あの頃は二人でいつも笑っていた。
夏休み、何度も繰り返した近所の冒険も、お祭りも、虫取りも、海水浴も、花火も。
ずっとそれが続けばいいと思っていて、あの頃、二人で遊んで居られれば他にほしいものは本当になかったとさえ思う。”また明日”、を繰り返して。
そして、楊ゼンはなんとも言えない気持ちになった。望はいまだ楽しそうに絵を描き続けている。
すぐ横にある、自分より小さい背中からなんとなく目をそらした。


それではその楽しくて仕方がなかった”日常”が”日常”でなくなったのはいつからだろうか。
”また明日”という言葉が、どこか遠い約束になったのは。
楊ゼンが前に望の背中を追ったのは、はっきりとは思い出せないくらいに遠い日だった。彼と一緒に帰り道を辿らなくなったのも。


……いつだったのかはわからないけれど、それは暑い季節だったのかもしれない。
楊ゼンはなんとなくそう思って、それでもそれはきっと正しいのだと思った。
振り返ることができる夏の日は、熱いことだけは覚えていても、その他の全てが既に遠い。




































ころん、と随分と短くなって、形の崩れたチョークが地面に転がる。












散々に落書きをしたコンクリートの上は、季節感を無視した一面の花畑となんでも生息している動物園が広がっている。
明日見つけた人が驚くかもしれないけれど、無くなったのはチョーク2本だけだし、雨で落ちる悪戯だし見逃してほしい、と言い訳をすることにした。
ずっと屈んだ体勢でチョークを握りしめるのは思ったより疲れる。指が痛い、と楊ゼンが駐車場の端のフェンスを背にして座ると、望はすぐ横のコンクリートの上に仰向けで、大の字になって寝転がった。


「あー、楽しかった!」
大きく伸びをして目を細める姿はまるで猫のようで、楊ゼンは笑いを堪えながらそうですね、と相槌を打つ。


「あー…なんか、落書きだけでわりと満足してしまったのう…」
「いや、随分描きましたからね?……描きながら、小さい頃もこうやって落書きしたのを思い出しましたよ」
「そうだのう、今思い返すと本当におぬしと遊んでばかりいたな。おかげであの頃の夏休みは楽しくて仕方なかったよ」
「後先考えずに好き勝手やってましたからね。あー…、そう言えば先生たちに内緒でここの駐車場裏に生えてる桑の実、たくさん積んで食べたりもしてましたよね」
「ああ、中でも甘いのを見つけるのが楽しかったのう」
「本当にあなたは先生に怒られることばっかりしてて…」
「何を言う、共犯だろうが」


くすくすと笑い合う。広い駐車場を見渡すと、その先に駆けている幼い頃の自分達が見えるようだった。


「……やっぱりここがなくなるなんて寂しいですよね」
「仕方ない、とはいえな。だから今日は遊ぼう!と思ってきたのだよ」
「ええ。…そのおかげで、今日はあなたと遊んだ昔のことをこれでもかってくらい思い出しましたよ。なんだかんだで、最近あまり一緒に遊んでなかったですからね」
「だのう。最近は会っても世間話くらいだったし…」
「ね。ただ今年に入ってからはあなた受験生でしょう?僕としては会ってもあまり時間を取らせちゃいけないかなって思ってたところもあるんですよ」
「うわ、せっかく忘れていたところに受験とか言うな。せっかくの夏休みなんだぞ!」
「その夏休みに受験生は勉強するんでしょうに…」
途端に顔をしかめて、聞きたくない、とばかりに首を振る望に楊ゼンは笑った。
「でもまあ、あなたの学力ならそんなに切羽詰まることもないとは思うんですけど。さぼっているように見えてその成績は詐欺ですよ」
「まあのう」
「否定はしないんですか」
「わしを誰だと思っておる。いや、確かにこのままで行けば余裕で大学は受かるだろうが、まあそれでいいんだが、でもな…、うん」
どこかはっきりとしない、曖昧な返事に首を傾げる。
「?なんか不安なことがあるんですか?」
「……」


寝転んで、空を真っ直ぐ見上げたまま。望は幾度か瞬きをしてからぽつりと溢した。


「楊ぜん。…のう、今、学校、楽しいか?」
「え、あ、はい。それなりに」


質問の意図が掴めないまま正直に返すと、望はまた”そうか”、とだけ呟いて黙り込む。
「望?」
「なんだ、彼女がいるとやっぱり楽しいのだろうな、毎日」
「は?」
「違うのか?なんか高校生になってからおぬしそっけないだろ。前より連絡取らなくなってきたし、なんか浮かれててきもいから、彼女ができたのかと」
「いや、きもいってなんですか。確かに彼女はいましたけど、最近別れましたけど…って、それはいいんですよ。いつ僕があなたにそっけない態度を取りましたか。さっきも言いましたけど、あなたは受験だから、確かにこっちから声を掛けるのは少し遠慮してましたよ。でも、それだけですよ?」
「昔はわしのうしろをよくくっついて歩いてきてたではないかー。しかもこの季節に怖い話をすると、すぐ泣きそうになってたな。”望、こわいです、こわいです”って繰り返して…わしよりもちっちゃかったし、かわいかったのう、あの頃のおぬし」
「だからそれいつの話ですか…」
がくり、と脱力するとその様子が面白かったのか、望はくっくと背を丸めて笑っていた。
「わしも、今日は昔のことをいっぱい思い出したのだ。そしたら、おぬしもおっきくなったのだなー、と思って…」
「あなた僕の親ですか。ニ歳しか違わないでしょう」
「似たようなものだろ、おぬしにとって」
まださも可笑しそうに笑いながら。ごろん、と寝返りを打つとそのままこちらを見ないまま続ける。


「…のう、楊ぜん、わしはおぬしの友人か?」
「何ですかいきなり。決まってるじゃないですか」
「でもおぬしに彼女いるの知らなかったし。学校生活もよく知らないし。幼馴染みってのは難しいのう。昔はあんなに遊んでいたのに、今は毎日あんな風にはいかないだろう。そりゃ大人になるわけだから、それは当たり前なんだが、わしは…」
「望?」
「……」
急に黙ってしまった望を見ると、いつもの彼がよくするような、にやにやしたような、からかうような、そんな表情はなくて。代わりにあるのは、一切の感情が抑えられた顔だった。ただ真っ直ぐに空の一点を見ている。


「…、望?本当にどうしたんですか」
「突っかかってるな、すまぬ。なんだ、結構寂しいんだろうな。公民館、なくなってしまうし、おぬしはやっぱりかわいくないし。今、時の流れの無情さ、というものをひしひしと感じておるところだ」
「なんですか、それ」
最後に告げられた言葉に笑うと、今度は望もいつものように笑った。そして此方を見て、しみじみと呟く。


「なんつーか、おぬし本当におっきくなったのう」


「…あなたは、あまり変わらないですよね」
「うっさい。これから伸びるわ」
無理だ、と思わず楊ゼンが笑うと、ふてくされた顔になる。
口を尖らすようにして、背を向けられる。
その背中はどこか頼りなく、自転車に一緒に乗った際、腰に回った細い腕を思い出させた。


――なんだ、これは。
楊ゼンは、妙な、ちくちくと全身を突かれるような感覚に襲われて、これは知っている、と感じた直後に違う、と思った。
自分が知っているのは、ちくちく、よりも強く胸の内を騒ぎ立たせる何か。やめておけ、と漠然と頭に響く警鐘のような、それ。どこか知っている、感覚だった。もう一度、強く響く。
黒い髪はさらさらと揺れて、すぐ手の届く場所にあった。湧き上がる感覚を振り切るように会話を続ける。


「ちょっと。拗ねないで下さいよ」
「拗ねとらんわ」
「拗ねてるじゃないですか…」
「拗ねてない…」
「……」


覗きこんだ顔は、目は。今までに見たことがないくらいに揺れていた。見上げてくる、切なげに歪められたその大きな目に息を飲む。じっと見つめてくる望の視線の強さに楊ゼンは言葉を失った。
僅かの沈黙のあと、望は小さく、小さく笑う。


「……なんで、おぬしはそんなにでかくなってしまったのだ…」
ゆらり、と上半身を起こして座り込んだ望は下を向いたまま呟いた。


「…わしはな。最近、昔のことばかり思い出すのだ。おぬしと遊んだ、昔のことばかり。振り返って思い出すばかりで嫌だと思うのに、やっぱり思い出して。だって、わしは最近のおぬしをよく知らない。わしは、それが寂しくて、」


どこか停止したままの思考のまま望の声を聴いていた楊ゼンの思考は、さらに途切れた。
動いたと思った目の前の存在がこれ以上ない程に近づいて、唇に、唇が重なった。
手の甲に、彼の薄い、左の手のひらが乗っている。その薄い手のひらに、ぐ、と力が籠められて、甲が軋んだ。
彼のもう片方の腕が首に回ってきて、強く抱き締めるとすぐに離れた。
熱い、と知覚した瞬間。間近で見る、彼のその歪められていた目からぽたと一粒、滴が落ちた。


「寂しいのは、わしだけかな」


小さくそう告げたのがきっかけで堰を切ったように、次々と地面に水滴が落ちて染みを作っていく。


「ようぜん、わしは、おぬしのことが」






「       」






音が、途切れる。
音にすればたった四文字の言葉が、反響しては頭の中に響く。
楊ゼンは、極力、望の笑った顔以外の顔は見たくない。
見てしまった後、ただ二人だけでいたあの夏には、もう二度と戻れないのだと知ったからだ。それはどうしようもないことだった。
































夏休みが終わる頃、望が小学生である最後の年のことだった。


望が一緒に行こうと言ったお祭りに、楊ゼンは一緒に行かなかった。正確に言うと、一緒に行く約束はして、決められた時間に、待ち合わせ場所に行かなかった。
楊ゼンが望との約束を破るなんてことはそれこそ初めてで、携帯電話も持っていなかったあの頃、望は泣いて楊ゼンの家に押しかけた。
望は泣くだけで、一度も怒らなかった。
ただわんわんと泣いて、家にいてよかったと手で目元を拭い続けた。
楊ゼンが約束を破るのも初めてであれば、望がこうやって泣くのも初めてだった。楊ゼンはそれを見て、ああ、自分はこれが見たかったんだな、と思ってただ一言”ごめんね”とだけ呟いたのだった。
他にも何かしら、約束を破ったことに対してそれっぽい言い訳をした気はするが、その内容はよく覚えていない。
約束を破った罪悪感も本当のことを何も言わなかったも罪悪感も、目の前で泣く姿に飲み込まれてしまった。これを、自分は見たかった。夏の暑さとの境界がなくなるくらいに、ぶわり、と体中の熱が沸騰するような錯覚さえあった。


楊ゼンが望の背中だけを追えなくなった日も、ほぼ同じ頃だった。






























いまだ目の前でしゃくりあげるようにして涙を落とす望を見て、やっぱり彼から遠ざかったのは熱に浮かされたような、暑い日だったと楊ゼンは思い出す。
結局のところ、彼の泣き顔が見たくて、困った顔も見たくて、一緒にいると楽しくて、兄弟のように育って、二つ年上の頼りがいがある大切な幼馴染みで、でも、だから。


「……望、」


ぼんやりとした思考で一言呼びかけると、弾かれたように望は顔を上げる。目元を濡らしたまま、勝手にしてすまぬ、と一つ大きく息を吐いた。


「…嫌いになったか?」
「なるわけが、ないでしょう」
「だよな」


しってる、と赤い鼻をすすりながら、迷わずに呟く。


「…だから、いいんだ。おぬしは知っていてくれれば。実は、今日はおぬしに伝えようと思って来たのだ。…………ちゃんと言えてよかった」
あー、すっきりした、とぐしゃぐしゃになった頬を大きく手で拭って、両腕を上に伸ばす。


「よし、帰るか」


結局落書きしただけだったけど、楽しかったからいいだろ。
そう言って望は立ち上がると、止めてあった自転車までいつもの足取りで歩いていき、サドルを叩く。


「ほら、早くしろ。おぬしが乗らんとわしが乗れぬだろーが」


ぺしぺしとサドルを叩いて笑う姿に、ほんの数時間前の姿が重なる。
面倒くさいから自転車に乗ってこなかったと言い、自分の気持ちを告げた後も、当然のように一緒に自転車に乗ることを疑わなかったのだろうか。意識していたのか、していなかったのか。
ただ、寄せられる気持ちに楊ゼンはどうにも堪らなくなった。
「ったく、人使いが荒いんだから…」
詰まる言葉をどうにかして絞り出して自転車に跨ると、前輪の上の籠に入っていたペットボトルが揺れる。
この暑さでは、中に入っているサイダーはとっくにぬるくなってしまっているに違いない。






「…ねえ、望。コンビニ、寄って行ってもいいですか」
「?別に構わんが?」
「…ジュースかアイス奢ってくれるんでしょう」
「……」


望は楊ゼンの言葉を確かめるように数度瞬きをした後、嬉しそうに笑った。
その笑顔にまた言葉を失って、楊ゼンはコンビニに行った後、望と一緒にアイスでも食べながら、自分の告げるべき言葉を考える。
彼は、きっと自分の抱えてる罪悪感を知らない。
焦がれた想いも、何も。


楊ゼンの脳裏にふと、望が回す自転車の車輪が過った。からからと逆の方向に回る、それ。
彼が回すのならば、ぴたりとそれを止めるのは自分の役割だった、昔から。
どれだけ時間が過ぎようとも、彼が泣くのなら、笑うのならば、自分は。






「楊ゼン、乗るぞー」
「はいはい、どうぞ」


仕方ない風を装って笑って、きっと、もう二度と来ることのない公民館を横目で見てから、真っ直ぐに前を見る。
むせ返るような、あの日の夏をやたらと近くに感じていた。




















二人だけの、夏。
































































*     *     *     *     *     *     *














































お互いの、ひみつの話。
似たような話をどんだけ書くのだ…わたしは…(ほんとにな…)
一番は自転車二人乗りしてる二人を書きたかったんです…


この二人は30歳近くになったら落ち着いて一緒に暮らしてたらいいんじゃないかというもうそう。
蔵出し小咄でした。長さ的に拍手に収まりきらんかったのでこっちにあっぷ。


題名はPerfumeたんから。
あ~ちゃんかわゆすかわゆす。まじかわゆす。


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拍手

拍手更新してから、ぽちぽちありがとうございました!
思ったよりぽちぽちして頂いて、嬉しいですo(*^▽^*)o
更新もあまりないのに拍手をいじってどうすんの…って思ってましたが、久しぶりに小咄もいじれてたいへん楽しかったです。
今年はぼちぼち楊太の蔵出しをしていきたいです…(お前…毎回そんなこと言って…)




5月のGWはスパコミもあったしマクロス展にも行ったし大変オタ充しまくりでした。
楽しかったよ~
ちーさんに会ったの2年ぶりだったし
くろまつさんとちゃんとお話したのも初めてだったし
さきさん、もずくさん、やなぎさんとも集まれたし、みんなで集まってわいわいするのはやっぱり楽しいですね(*´ェ`*)


しかしGW過ぎてふと思うのはわたしの外見コンプレックスの異常さである…(笑)
もう…いい年なのに…よよよ
わたしと直接会ったことがある方は、わたしの病的な外見コンプレックスをご存知だと思うのですが(笑)、大体好きな人に会うときにコンプレックスがMAXになります。
服装も化粧も、一番いいのは普段のかっこだってわかってるのですが好きな人に会うときは大体やり過ぎるよね…(まあ化粧はもとから好きなんですけど、なんかトータルで方向間違う)
いつまで…思春期…ヽ(´▽`)/
邪気眼使いこなせるようになりたいですえへへ












*拍手お返事


>素敵楊太を~の方
あれ?これお知り合いの方じゃないですか??(笑)違ったらすみません
コメントありがとうございました!
煙草の話はようぜん乙女ですが気にいってた話なので嬉しいです~(*´ェ`*)
実はすーすもようぜんのことちょっと気になってはいて、夏休みあたりお祭りで偶然会って、ようぜんが勢いで告白するという続きも考えてました。
高校生の夏とか個人的にやばいたまらんです

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春眠暁を覚えず(*´ω`*)

とあるロシア人がこの詩を聞いてなんて残酷な詩なんだ…と解釈した話が面白かったです。
雨交じりの風は恐ろしいものだし、迫害をイメージさせるし。
花が散る風景は美しいかな?というのはやっぱり国民性からくるものでしょうか。
とりあえずこの季節毎日よく寝れます。
翻訳こんにゃくがほしい。
こういう話を直接国が違う人々と話したい。






さて!今回はあんまり楽しくない話なのですが吐き出しですよ。
ぼんやりした話ですがすみません。


最近は色々人生考えることいっぱいで頭パンクしそうです。
いや実際はそんな考えてないんですけどキャパシティ的にオーバーです。


自分の体ってある程度はちゃんと自分で把握してるつもりだったんですよね。
しょっちゅう具合悪いなりに。
でも、そんな把握してるつもりの体でも自分の予想外の所から自分の現状叩きつけられるとどうしていいのかわからなくなるのですな…


とってもとっても大袈裟な話になっちゃうけど、「あと一年しか余命ないよ」って言われてたらどうする?の感覚に近い。
えっどうしよう、何かしたいことないかな、どうしたらそれができるかな、ていうかしたいことあったかなどうしたらいいかなあわわ的な。
実際はそんな余命どうこうの話じゃ全然ないんですけど、体って有限なんだなって思いました。
てういか30歳になるんだしな、とも思った。
生きてる以上、どんなに歳を取っても努力で体を高めることはできるよね。
でも普通に生きてたら体も歳とるよねーっていう。
ベストのままで過ごせないこともある。
自分の状態だけが悪いんじゃない。
きっと、わたしの場合もよくある話の一つ。
でも、本当にこの具合の悪い体に慣れてしまっている部分をどうにかしないとな、というきっかけになりました。
わたし…どんだけ不具合抱え込むねん…みたいな…(笑)


やりたいことがあったときに体が自由にならなくてできないというのをどうにかしたいなー、という気持ちを優先させた時、今の自分では諦めないといけないものがたくさんあるんだな。
わたし、この土地離れて暮らしていけるかなあ…(正しくは欲しい服がすぐ買えない場所で生きていけるだろうかという不安)(何言ってるんだとか言わんといて…重要なことだよ!笑)


健康な体になりたいナ―ヽ(´▽`)/

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お久しぶりでございます

約半年ぶりのブログで今までどういう書き方していたのかすっかり忘れておりますよ!笑


去年からちらほら言っていた通り、今月半ばで7年勤めていた会社を退社しまして、現在絶賛ニート中であります。正式にはまだ有給消化中ですが気分はニートです。
毎日寝すぎてやばいヽ(´ω`)/
予定ない日はご飯食べて寝てるヽ(´ω`)/
な、7年間連休の取れなかった反動が…とか言ってみる。
このまま社会復帰できねーんじゃねーの、とびくびくしますが、とりあえず今年は就職活動もできる範囲で焦らずのんびりやっていこうと思っています。
きっとお金なくなったら何かしらで働くしね!(笑)


そうそう、ブログ書くついでに久しぶりにアクセス解析も見たんですが、こんな半年も音沙汰なかったブログにも一定数の方に来て頂いていて驚きとともにありがたく思いましたぶわ。
いや…ここしばらくはブログで書くたびに、その書く間が空きがちなのでそのたびに来て頂いてる方がいてびっくりしてはありがたく思ってはいるんですが(笑)
最近はやっぱりツイッターの方で呟くことで、備忘録や日々の吐き出し的な内容はある程度満足してしまっているので小咄の更新がないとブログまでなかなか手がつかないのが現状なのですが、このブログがなかったら今仲良くしてもらっているよたっこさん達と会えてなかったと思うと色々と感慨深いですよねぶわわ。
拍手して下さっている方もありがとうございます!


さーて順調に4213にはまっている最近ですが(臨也天使マジ天使)(楊太と違う嗜好のカップリングで新しい世界開きました)、今年はヨタぷちおんりもあるということなので、年間通してオタ充できそうですね(おそろしいわ)
今年残り4分の3、楽しく過ごせますよーに!(´∀`)


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本当に時間が経つのがはやい

あと数日で10月だなんてそんな…
こんばんは幸田です。
えーと、近況としては、ついったの方では呟いていましたが、来年の2月くらいをめどに今の仕事辞めたいなーって感じになってます。
就職してから7年、あっという間だったわ…


更新ない間も拍手して下さった方々、ありがとうございました!
定期的にぽちぽち嬉しいです…(TT)
連打して下さった方もありがとうございました!
これは…あれかな?ちゅーお題に対してなのかしら??笑
何にしろ嬉しいですありがとうございます!


ちゅーお題は発ちゃんや天化も出したいのですがいかんせん他のキャラ書いたことあまりないので気恥かしいです。
ブログにあげてない話では発ちゃんや天化は書いてるんですけどもー
なんでかブログにあげる話はいつも二人の世界すぎる件…笑






さーて、来月初め、4213おんりに初めて行ってこようかな!なんて思ってます(あああ…ここまでくるともう…)
こういう、まだ連載中のジャンルのおんりとか実は初めてで、いくらくらい持っていけばいいのかな??と思ってます。ようたのおんりは連載終了後しか行ったことないからなあ…
どうなんだろ10万円くらいで足りるのかな??もうちょっと持っていった方がいいのかな??
18禁おんり直参200スペとかもうどうしよう楽しみ!
見渡す限り18禁の4213なんでしょ??
なんだそれヴァルハラか!
ヴァルハラはここにあったのかよ!
えろいのだけが読みたいわけじゃないんですけどねいやいやマジでほんと
なんかほしかったのに売り切れて買えなかった!とかあるのかな…
いまどきの、わりと旬のジャンルはどうなってんのかもうよくわからんよ…
だってイベントで本なんて基本ようたしか買ったことないんよ…(ハジ小夜は通販でしか…)
最盛期のようたの行列がすごかったことしか覚えてないよ…(笑)


まあアラサーでこんなんでどうしようと思わなくもないのですが、一度の人生なので楽しんでこようと思います(^p^)(大笑)
来年は職なしで趣味にお金かけてらんないかもしれないしね!にご!

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キス22 お題:背中(確認)< 4:お伽話で、ひもすがら >





















もはや見慣れた天井だった。


手探りで探したリモコンを掴んで、室内の設定温度を下げた途端に風が勢いを増す。
そよそよ、が、ごうごう、に変わるくらいには下げた。いや、そんなに音しないけどあくまでイメージで。
ひんやりとした空気が素肌を撫ぜると、ようやく上がった息が落ち着いてくる。
人工的な風はあんまり好きではない。そしてエコという言葉を無視した温度設定だが仕方ない。5分。いや10分したら。もうちょっとしたら温度あげるし。一晩中この温度にするっていうわけではないし。ほら、この猛暑、熱帯夜。熱中症とかはいやだ。そして何よりこのままじゃ一緒になど寝ていられない。
ここは自分のベッドじゃないけれど、暑いからと言ってどくつもりなどさらさらないので、しかしもとの持ち主を追い出すほど冷たくしたいわけではないので(ていうか大好きなので)、やはり自分に残された選択など一つしかないのだ。
うん、まあ実に言い訳がましいが暑くてもなるべくくっついて寝たいので部屋の温度を下げさせてもらったわけである。


ふー、とひとつ。
ひとつ長めの、大きな息を吐いて伸びをして、開いたままだったドアの方に視線だけ向ける。
本来であればリモコンの設定温度を勝手に下げると「こんなに下げなくても」とかなんとか言って、普段からお世辞にも愛想があるとは言えない顔をさらにしかめてあまりいい顔をしないであろうベッドの持ち主は、今ベッドにいない。
廊下の先にあるキッチンの方に向かった気がするけれど、ベッド横のライトしかついていない部屋の中では目を凝らしてもそんなに先の方までは見えない。この家っつーかマンションは無駄に広い。
シャワー浴びに行った感じじゃないしすぐ戻ってくるかと、つらつらとそんなことを考えていると、ばたん、と小さく響く聞き慣れた音。
ああ、飲み物取りにいったのか。
確かに喉乾いた。
気付いてしまえばからから、と言ってしまえるほど喉が渇いている。暑過ぎて温度を下げる為にリモコン探すのが一番で頭から抜け落ちていたのだった。
予想通り、飲み物を取りに行っていたベッドの持ち主の手には水滴のついたペットボトルが見える。そしてこれも予想通り、ドアから部屋に入るなり不機嫌な声を出した。


「ちょっと。何、温度勝手に下げてんですか」
「いや、暑過ぎるし。あのままだったら確実に熱中症だから」
「だからって一気にこんなに下げることないでしょう。…って何笑ってんですか」
「…す、すまぬ…」
「あなた時々唐突に笑い出しますよね」


何から何まであまりにも予想通り過ぎて肩を震わせていると、ぴたり、と頬と肩に冷たい感触が当たる。至近距離で見えたのは自分が好きなメーカーのミネラルウォーターのパッケージだった。
「ほら。声、枯れてますよ」
「ああ、うん」
ありがとな、と一言呟きながら上半身を少し起こしてペットボトルの蓋を開けて口にしようとしたところ「冷たいですからね」と素っ気ない声が掛かった。
ちなみに飲み物が冷たろうが熱かろうが、飲む前に彼が必ず一声掛けてくるのはデフォルトである。
それは”だから少しずつ、ゆっくり飲め”ということだとはわかってはいたけれど、知らない人が見たらまるで怒っているのではないか、と思えるぐらいの素っ気なさに、思わず”だからなんだ”と面白半分で訊きたくなってしまう。
彼は基本的に、意図的にしろそうでないにしろ、自分に対しては言葉が足りない。
部屋の温度だって”勝手に下げるな”と言っていい顔をしないのもきっとイコールで”風邪引くでしょう、あなたが”ということなのだ。実際に、現在進行系で無言で肩までタオルケットがふわりと掛けられた。
だから暑いから温度下げたって言ってるっつーのに。
なんだ、あれか。おぬしはわしのお母さんか。
ちなみにこのふわっふわのタオルケットも気がついたら自分の為に用意されていたものだった。
本人から聞いたわけではないけれど彼が使っているところは一度も見たことがないので、やはり自分専用なのだろう。
常に不機嫌そうな彼がどんな顔してタオルケットを選んで買ったのかと思うと想像するだけでおかしい。
付き合い始めた当初から思っていたけれど、彼は普段の態度に反してなんていうか過保護である。
まあ個人的にはその素っ気なさとか、言葉が足りない故に目でこちらの様子を窺う様(それでも不機嫌そうに)とかもひっくるめて好きだし、過保護なのも嬉しくないわけではない。寧ろ嬉しい。
(親友に一連のことをそれとなく話したら「ひどいツンデレだね!」と天使のような笑顔で返ってきて、俗に言うデレがちょっとわかりにくいとは思ったがとりあえず納得した。)


こくこくと冷えた水を飲み込んで、喉の感覚がクリアになる。
部屋もだいぶ冷えてきて、体全体が落ち着いてきたところで、隣でぷしゅ、と小さく空気の抜ける音がした。


「炭酸?」
「あ、ええ」
「珍しいな、普段飲まないのに」


ベッドの端に腰かけた彼の手元を見ると、コンビニや自動販売機では見たことのないデザインがあった。
ペットボトルに比べると細長い、サイドテーブルの暖色の明かりを受けて底がきらきら光るグリーンのガラス瓶。
「…ジンジャ、エール?」
パッケージに書かれた横文字を読み上げて、それこそ珍しい、と思う。
基本、彼は甘い飲み物が好きではない。
すると、こちらの考えてることを察したのだろう、「あまり甘くないんですよ」と返ってくる。
「これはどちらかと言うとジンジャーの風味が強くて辛いんです。飲んでみます?多分あなたの好きな味じゃないですけど…」
「一口もらう」
「辛いですからね」
「わかったっつーの」
単純に飲んだことのないその味が気になって、開けたばかりのそれを受け取り一口、口に含む。その瞬間に、ぴりり、と思った以上に強い辛味が舌を刺した。
「か、から…!」
「だから言ったじゃないですか。人の話聞いて下さいよ」
「だ、だって、こんなに辛いと思わなくて…」
辛い、というより若干痛い。
ほんの少し飲んだだけなのに舌も痛いし喉も痛い。
ジンジャエールの瓶を返すと、サイドテーブルに置いていた自分の分のミネラルウォーターに手を伸ばす。2、3口飲んでやっと辛味が引いてくる。
辛味の後に普段知っているジンジャエールの甘みを探したけれど微塵も見つからない。
隣で、彼は平然としてそのジンジャエールを何口も飲んでいた。
こちらはまだ舌がじんじんとしているというのに信じられない。
「そんなん飲んだら余計喉がかわくだろ…」
「そうでもないですよ、あなたがお子様舌なんじゃないですか」
まるで水を飲むみたいに飲み続けている様子に再び、飲んでもいないのに舌を刺した感覚が蘇って眉をしかめた。
「絶対おかしいぞおぬしの舌!」
「普通に飲む人がいなかったら売ってないですよ。そんなに辛かったんですか」
「つーか、久しぶりにそんな辛いの飲んだ」
「大袈裟ですね」
「大袈裟じゃないっつーの…、…って…」
「?」
「……」
「どうかしました?」
「……、いや、うん」
辛いと騒ぐ自分を見下ろしてくる顔が気のせいか。
一瞬。一瞬だった。しかもほんのちょっとだけ。
二人でいればいつもは引き結ばれたままの口の端が、ほんの少しだけ上がったように見えた、気がした。
しかし確かめるように、ぱちぱちと意図的に瞬きをしても。目の前にあるのは変わらない愛想のない表情でしかない。
「……」
「師叔?」
訝しげに問いながら、不審者を見るような目つきで覗きこんでくる。失礼な。
…無意識かこの野郎。
でも、きっと間違いじゃない。時間差で、じんわりと込み上げてくる感情に知らず頬が弛む。


「……辛かったぞー」
「はいはい、わかりましたって」
「それ、前から好きなのか?」
「……ええ。時々飲みたくなるんですよ。小さい頃から家に置いてあって…、コンビニとか近くのスーパーじゃあんまり売ってないから、見つけると買ってしまって」
「ふーん」
じゃあ、次わしも見つけたら買ってくる。
そう呟いてサイドテーブルに半分ほどになったミネラルウォーターのボトルを無造作に置くと、ごろごろとベッドの上で転がった。
「ちょっと。寝るんなら水放置しないで下さいよ」
「おぬしにまかせた。わしはもう一歩も動けない」
「ったく……もう少し、端に寄っておいて下さいよ」
はあ、とうんざりしたように溜息をついて、視界からサイドテーブルのミネラルウォーターがひょい、と消える。
冷蔵庫の扉の音がしたら大した時間も経たずに明かりも落ちるだろうと、再びエアコンのリモコンを手探りで見つけると温度を上げてタイマーをセットする。
部屋は真夏の夜には充分過ぎるほど静けさを取り戻していた。
また朝方になれば暑くなるだろうけど、それまではくっつき放題である。
「……にしてもどこで売ってるのだ…」
起きたらネットで検索すればいいか、と壁側にごろんと転がると目を閉じた。
目を閉じていても、目蓋を照らしていた明かりが遮られて自分の上に影が差したのがわかる。
その後すぐに落とされたキスは、やっぱり心なしか辛かった。




















ぱちり、と目が覚めた。
視線だけで辺りを窺うと、ベッドのすぐ近くのカーテンから見える外はまだ暗い。
そこで少し違和感を覚える。
”あれ、背中”
目の前にあるのは、細身ではあるけれど自分より広い背中。
大体抱え込まれるようにして寝ていることが多いので、背中を見るのは珍しかった。
大方、寝ている内に暑くなって転がったのは自分で、そこで彼が寝返りをうった、ということなのだろう。
シーツに触れている背中の右側に顔を静かに近づけて、ごく軽く唇を触れさせた。ついでに、頬も寄せて寄りかかると落ち着いて、驚くほど急にまた眠気が襲ってくる。
まどろんだ意識の中で、今日彼が見せた表情を反芻した。


”……ずっと、見てたからな”


今はこんなに近く、匂いも感じられるほど傍にある背中を、何メートルも離れた場所からずっと見ていた。
この背中の肩甲骨のあたりを、そして彼自身を。
それはそのまま自分と彼との距離だった。
だから、見間違えるはずがない。


”いつか”
”いつか、馬鹿笑いさせたいのう”


なんていうか、いまいち笑いのツボがわからないけど。
その前にせっかくの夏休みだから旅行か、旅行。
こいつが人ごみは嫌ですとか駄々捏ねるから、遠出して、人のあまりいないところで。






もう一度確かめるように、起こさないように同じ場所に軽くキスをして含み笑う。
目蓋の裏に浮かぶゴールドの泡。そこには彼と二人きり。
アルコールなんて入ってなかったはずなのに、今までに飲んだことのなかった味が途端に自分のものに思えるくらいには心地よく、ふわふわとしていた。






























*     *     *     *     *     *     *     *












真夏の夜の夢。




















味だって景色だってようぜんさんと共有したくて仕方がないすーす。笑。
夏ですね。
ジンジャーエール見たらががっと書きたくなった話であります。
最近ドライしか飲んでないな~と思って。
辛くて一気に飲めないけど、時々飲みたくなるのはわたしです。
イメージとしては定番でもウィルキンソン的な。


いやー、小咄ばっかり書いててさーせん…(笑)
次は宿題です。
が、がんばるお…^^ にご!

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最近常に

胃もたれ気味の幸田です。
ふつーに食べすぎなんだろうなきっと…(笑)
食欲抑えきれませんo(*^▽^*)o


さて、お話更新してから拍手ありがとうございました!!
拍手して下さった方々本当にありがとうございます!
うれしーよ~
ようぜんさん、なんか甲斐性とかひどいですけど大丈夫だったんでしょうかね…(^▽^)


にしても毎度誤字脱字が酷過ぎてすみません。
毎回後から気付くんですが、今回軽く10か所以上誤字脱字があって反省しました(ちょいと修正しました)
何それひどい。てかなんで気付かない(笑)
いやさ…自分の書いた話なんて恥ずかしくてなかなか読み返せないわけですよ…
なので少しほとぼり冷めてから見直すわけですが、ええ、なんていうかもう少し推敲してから更新するべきだと思いました。
次こそはもう少し誤字脱字を少なくだな…!(ゼロにしたいところですほんとに)


※追記
言ってる傍から誤字だらけで凹みました。笑。
みんなそんな気にしてないかもしれないけれど…!
ひ、ひー(T□T)

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キス22 お題:耳(誘惑)< 3:切っ先はメルトアウェイ >

























気がついたらこれ以上ないほど近くにあるのは、驚きに瞠られた大きな目。


大きな目を縁取る睫毛の奥には確かに自分が映っている。


その時は、その時は何故かそれをどこか他人事のように見ていた。




































ほんの数時間前の出来事が脳裏を過る。


わかっている。
自分が何をしたのか、わかっている。
わかっていても、早い話がその事実を認めたくない。
どう考えても既に起こってしまった事実でも、認めたくない。


「……どうして」


無意識に零れた声は掠れていた。
大学から帰ってきて家に着いたのは、既に日付が変わる頃だった。
一人暮らしをしているマンションに辿りついて、鍵を開けて中に入るとドアを後ろ手に閉めたまま動けない。
玄関の灯りを点けることも忘れ、立ちつくす。
あくまで平静を装って、なんとかいつもと同じように帰ってきたのに。そう、いつもと同じように。決して走って帰ってきたわけでもないのに動悸が激しい。
心臓が、常にない速さで動いているのがわかる。
その理由を知っている、というか頭の中をずっと巡っている。
そしてその理由と同時に頭に浮かんでしまうのは、同じゼミの”彼”の姿の残像。


「…………死にたい」


勝手に吐き出された言葉は思った以上に鬱々としていた。
自己嫌悪、というのだろうか。
とにかく忘れたい。なかったことにしてしまいたい。
ぐるぐると、同じことばかりが頭の中を巡っている。






突然の出来事に驚いた大きな目が。顔が、脳裏に焼き付いて離れない。






「……あり得ないんだけど」
しかしどう思い返しても、自分からキスをした。
しかも言うに事欠いて”嫌い”とか言った。
自分からキスしたのに”嫌い”とか言った。
「あああ!」
結構大きな声が出てしまったけれど、深夜だとかそんなものを気にする余裕もない。
玄関から一歩も動けないまま、文字通り頭を抱える。
あり得ない、何だそれ。あり得ない、あり得ない。
あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない。
「…………」
……どれだけ”あり得ない”を繰り返しただろうか。
時間の感覚も最早曖昧だ。
決して短い時間じゃなかったことだけが、かろうじてわかるくらいで。
それでも。
それでも、と溜息を吐く。
”何だそれ、あり得ない”は彼の方が言いたい台詞に違いなかった。
今まで顔を合わせれば散々無視された挙句、その相手にいきなりキスされたのだ。しかも男に。
何だその流れ。自分の行動は、どう彼に伝わったのだろう。死にたい。


「……どうして、」


自分のものではないような、茫然とした声。
どうして。
どうして自分は彼の前だといつもこうなってしまうのだろう。
言い訳にしかならないけれど、彼以外の前ではこうもおかしいことにはならない。
周囲との人間関係はいたって良好で、こんな風に悩むことなどない。
そうだ、彼の前での自分はおかしい。いつも苛々している。
彼が、自分と仲良くしようと歩み寄ってくれているのは知っていた。
知りながらも子供のように無視をして、早一年。
無視しようとしたくてしていたわけではない。ただどうしていいのかわからなかったのだ。
他の友人たちと違って、何故か彼の前に立つと何を話していいのかわからなくなって頭の中が真っ白になる。
”顔をこれ以上見たらいけない”と言う、うまく言葉にできない感情に体中が支配されて、そして気がつくと彼に背を向けている。考える前に動いてしまっている。
今夜のこともそうだ、とそこまで考えて思考がループしていることに気が付いた。
…どうしてキスしてしまったのかなんて、そんなの。
そんなの”目の前に彼がいたから”としか答えようがないのに。


本当に何やってんだ自分、と自嘲する。
苛々とした気持ちを発散させるかのように後頭部を掻く。


きらいだ、と彼に告げた言葉はその通りで、自分は彼といると、自分が思い通りにならないから彼が嫌いなのだった。
そうだ、こうやって思い通りにならないからとこんなに苛々するのも、ようは自分だけなのだから。
彼は自分になど振り回されずに普段通りに生活しているのに、自文だけがこんなに苛々している。
彼も今夜のことに怒って、憤ればいいのだ。
男なんかにキスをされて、しかも嫌いとか言われたのだ。普通にふざけるなとキレていいレベルである。
……その考え方に警鐘に似た何かが頭の中に強く鳴り響いて、それでも疲労していた思考でそれ以上考えるのは無理だった。駄目だ、その考え方は駄目だ、と誰かが訴えたけれどあえて無視をした。
ただ、本当に彼はどう思ったのだろう、と今度は意図的に彼の残像を追った。
掠めるようにして触れた先に、彼は。






































初めて”彼”を見たのは、大学に入学してから間もない頃だった。


同じ授業を取ってもいない頃。ちゃんとした接点はなかったけれど、彼は人の中心にいて、とにかくよく目立つ人だった。
彼の周りにはいつも楽しそうに人が集まっていて、彼を取り巻くその空間は、空気が柔らかい。


自分も幼い頃から、大概目立つタイプだった。
それはもう、自分で言うのも憚れるけれど一番の理由は整い過ぎたこの容姿で(笑うところではない、念のため)同じ学校の人なら自分の事を知らない人間はいないというぐらい目立っていた。
小さい頃は周囲からの不躾な視線が煩わしくてやたらと突っかかっていたけれど、歳を重ねるごとにそれもなくなった。
時折、嫉妬からかあからさまな冷やかしや嫌がらせを受けることもあったけれど特に気にする程でもなかったし、それも一部の相手からだけで、自分に寄せられる視線は大半が好意や憧れからくるものだった。
それならばどれだけ不躾であってもわざわざ波風を立てる必要もないと、その場をうまく回す言葉や態度も覚えた。


周囲には自然と人が集まった。
どこか似ている状況なのに、全然似ているとは思えない自分と、彼。
次第に、あの人の周りにはなんであんなに人が集まるのかと気になり始めた。
それはもちろん容姿や性格、育ってきたであろう環境から考えると似ていなくて当然なのだろうけど、何故かその違いがひどく引っかかった。
そして、いつの間にかその”目立つのに自分とは似てない人”が、視界に入ればそのまま目で追うようになっていた。


それから。彼が気になるようになっていても、選択していた授業は違ったので、ちゃんとした面識がない状態は暫く続いた。そして彼を目で追うようになって半年は過ぎた頃。
授業と授業と間の移動時間だっただろうか、キャンパス内の道ですれ違った時の横顔をよく覚えている。
彼は賑やかに笑っていることの方が圧倒的に多い。友人らとくだらないことでふざけ合ってこれでもかというくらいに馬鹿みたいに笑っていることもある。
だから、一人でいる際の表情が思った以上に静かで大人びていて、持っていたイメージとのギャップがあった。
背筋がぴんと伸びていて、凛としている様はどこか品さえある。


”…なんていうか、こう”


声を上げて笑っているイメージが強くて気がつかなかったけれど、黙っていると単純にきれいな人なんだな、と思って……、思って。思って。
”え”
それと同時に唐突に体を巡った衝動に、はっとする。


”なんだ”


”なんだ、今の”


それは知っている感覚だった。
ただ、普通に考えれば、今の状況ではまず起きえない衝動にひどく焦る。
一気に速くなった心臓の音に、唾を飲んで呼吸を整える。
違う、何かの間違いではないのか。
確かに派手な作りではないけれど、彼の顔は整っている。
しかし整っていてきれいだとしても、それはない。今自分が考えたことは、ない。
今、自分は同性の彼に対して何を思ったのか。


駄目だ、いけない。
これ以上は深く考えてはいけない気がする。
いや、気のせいではない。確信だった。
一度も話したことなどないのに、彼にこれ以上関わってはいけないと強く思う。
本能からくる感覚に抗うために、無理矢理に思考を押し留めた。


”これじゃ、まるで”


……これ以上踏み込んでは取り返しがつかない。






その日から、彼が近くを通っても極力見ないようにした。
そのまま数カ月が経って、彼と同じゼミに入ってからも。どんなに笑いかけられようとも、ずっと。


























まあそんな気持ちも虚しく結局うまく繕いきれずに、彼にしたことと言えば。


「あー…」


朝、目が覚めて早々、唸る様な声が出る。
ベッドから見慣れた天井を見ながら、気分は最悪だった。
よく覚えてはいないけれど、きっと悪夢を見たに違いない。体が重い、だるすぎる。


昨晩は自分のしたことを認めたくなくて、精神的に疲れた状態で現実逃避をしたまま眠ってしまった。
一晩明けて、幾分落ち着いて改めて考えてみても現状はひどかった。
彼を思い出すと相変わらず苛々する気持ちは消えないし、というか、本当に自分は何をした。やっぱりこれはない。
触れるだけの他愛もないキスだからとか、そんなのは問題ではない。


”かなり、驚いていたよな”


再び、これ以上ない程近くで見た彼の顔が思い出される。
当然だった。キス自体は幼い子供のするようなものであったとしても、あれだけ無視し続けておいて、しかも男に、の一言に尽きる。なんだかもう穴があったら入りたいとはまさにこんな心境のことだ。考えれば考える程、鬱蒼とした気分になっていく。


それでも、悪あがきでもこれ以上事態を拗らせたくない、と休まずに行った大学での、彼の態度はまるっきり予想外のものだった。


「おはよう、楊ゼン」
「…、え、ああ。おはよう、ございます」
「もう少しで課題の発表だな、がんばろうな」
「あ、はい」


友人らの前で挨拶をしてきた彼は、普段の通りにこやかに笑うとさっさと席について授業の準備を始めていた。
こんなにもあっさりしているのは、二人きりではないからだろうか。
しかしその後どれだけ時間が経っても、彼の態度は変わらなかった。
彼も一晩経って事態をしっかりと把握して、”気持ち悪い”とか”関わろうとしていのが間違いだった、もう近寄るな”だとかそれぐらいのことは言われるかなと思っていたのに、全くそういうことはなかったのだ。
他の友人らに言いふらした様子もなく、からかうでもなく。
軽蔑も、怒りもその眼にはなく、ただ今までにないくらいまっすぐにこちらを見てきたのだった。
余りにも予想外過ぎたその眼にどうすることもできなかった。彼を目の前にしてもどうしていいのかわからずに戸惑う気持ちを取り繕って、今まで通りに接することが精一杯だった。
まっすぐに見つめられながら、授業に関することについて話しかけられれば、彼が何を考えているのかわからず不気味に思いつつも、不自然でないように応えた。
そんな自分の態度をどう思ったのか、彼は屈託なく笑いながら、それこそ今まで通り単なる世間話でしかない会話をふとした拍子に持ちかけてくる。
”学食の新しいメニューは食べたか”とか、”レポートの締め切りはいつだったか”とか。
そんな何でもないような会話を何度か繰り返して、何日か過ぎて、気付く。


彼は、全くなかったことにするつもりらしかった。


彼の中でどういう気持ちの整理があったかはわからない。
しかし、少なくとも忘れたい、関わりたくない出来事だったのは間違いないだろう。
それもそうだ、と納得するのと共に、それでも何かしら言われるのではないかと思い続けていただけになんとも言えない気持ちになった。
胸の内を占めるなんとも言えない感情に、それならば自分は彼に一体何を言って欲しかったのか、今更ながらに自問する。
自分のしたことに対して怒ればいいと思っていたけれど、それはつまり、彼に何を求めていたのか。
何故か、全くなかったことにされるとは思っていなかったのだ。
拒絶も、無視もされず、全く何もなかったように振舞われるとは。


でも不思議でもなんでもない反応だった。なかったことにしたい、あのことに関わりたくない、と思われるのは。
そもそも、自分だって忘れたいと思ったし、何事もなかったかのように振舞っている。
自分がそんな状態なのに、彼に何が言えるだろう。
何もなかったことになって、当然だ。
しかし当然だと思いつつ、釈然としない気持ちはいつまでも燻っていた。
























何もなかったように時間だけが過ぎて、春が終わり、初夏に向かう季節にそれは唐突に問いかけられた。


それは、授業も何もない休日の午後、日が暮れる一歩手前の時間。
一人暮らしをしているマンションから出かけもしないで部屋に居たところ呼び鈴が鳴って、誰が来たのかと部屋の中から伺えばドアの前に立っていたのはまずいるはずのない”彼”だった。
彼が、自分の部屋に訪ねてきたことなど今まで一度もない。マンションの場所を教えたこともない。
何で彼がここにいるのか、状況が掴めないままドアを開けると、彼は真っ直ぐにこちらを見据えていた。
いつもの教室でのふざけている彼とは違う真面目な表情に、いつかすれ違った際に見た彼の横顔が思い出されて小さく息を飲む。


「…急に、どうしたんですか。そもそも、何でうちを知っているんです」
「……のう、なんでおぬしわしにあんなことをしたのだ?」
「え」
「え、ではない。のう、なんでだ」


質問には答えずに逆に問いかけてきた声は、気のせいではなく”必死さ”、というものを含んでいた。
すぐに、彼が何を言おうとしているのかを察して、一気に心拍数が上がる。
彼はなかったことにする気ではなかったのか。
なんで、とそればかりが頭の中を巡って、情けないことに上手く言葉が出てこない。
そうだ、自分は彼の前に立つと、いつもこうだ。
何も言えないまま、ただこうやって。


「逃げないでくれ、楊ゼン」


頼むから。そう掠れるぎりぎりの声で絞り出され、懇願された響きに頭が殴られたような衝撃を覚える。


彼は、なかったことにするつもりだったわけではない。
彼は待っていたのだ。あれから、いつだって真っ直ぐにこちらを見つめながら。
…それに、本当は気付いていたけれど、気付かないふりをしていた。
逃げて、逃げて、彼にあれから何も告げないのは彼の態度のせいにして、それで。


「師、叔」


思わずぽつりと零れたのは彼の渾名だった。
誰が、どういう意味合いで呼び始めたのか知らないけれど、誰もが呼ぶ彼の渾名。
すると彼はそこで思いつめていた表情をふと和らげ、小さく笑う。
「初めて、呼んだな」
「…今まで何度も呼んだことありますよ」
「いや、二人きりのときでは初めてだよ」
初めてだよ、ともう一度言って、彼は今度はただ嬉しそうに顔を綻ばせた。
「わしだって、あれから色々考えたんだからな」
ドアを開けて玄関先に立ったままだった彼は、ずい、と一歩踏み込んで静かにドアを閉めた。


「楊ゼン。わしは、おぬしが、好きだよ」


がちゃん、とドアが閉まる音と同時に、ぶつかるように正面から抱きついてきた人の頭が、ちょうど鎖骨のあたりにこつんとあたる。
肌に直に触れる、さらさらとした髪の感触の、妙に馴染む感覚に眩暈がしそうだった。
「師叔…、何、を」
「おぬしが、わしのことを大嫌い、でも」
おそるおそる、と言った風に、ゆっくりと背中に細い両腕が回される。
その感覚もひどく馴染んで、彼はもともと”ここ”に収まる為に作られたパズルのピースのように、ちょうどよくはまってしまった。
しばらくすると、ぎゅうと背中に回っている腕の力が強くなる。
「わしは、おぬしが好きだ」
「…………」
ああ、明日自分は死ぬのだろうか。
だってそうじゃないか、この人が自分のことを好きだと言うなんてどうして想像ができる。
今までの自分の所業を振り返って、そして今、現在進行形であまりにも現実感がない。…だからこそか、そのあまりにもない現実感にもうどうでもいいかという気分になる。
今までこだわっていた、認められなかったものが急速にどうでもよくなり始めていた。
本当に、本当にどうしてこの人が、自分のことを好きだ、なんて。
明らかに自分の考えられる許容範囲を超えていると、本当に一瞬でどうでもよくなるらしい。
そもそもなんで自分はこんなにも彼から目を逸らして、逃げていたのか。
何を、堪えていたのか。
でも、彼が何故かこうやって今腕の中にいるのならば、もういいか、と。
そこで頭で考えるのはあっさりと止めて、衝動のままに自分に抱きついている人の背中に腕を回した。細い体はわずかに身じろいだけれど、それだけで抵抗も何もなく腕の中に収まり続ける。
その抱きついてきて伏せている頭の、艶のある髪から覗く左耳が少し赤く染まっていた。それがどうにも美味しそうに見えて、上の方をかぷりと軽く食むと彼は腕の中でびく、と震えた。
「……っ」
ぺろり、と軽く舐めると。息を詰める音が聴こえたけれど、まだ抵抗がなかったことをいいことに誘われるままにもう一度唇で触れる。
二、三度触れて耳と同じように赤く染まっている首筋にも上から辿るように唇を寄せると、そこで初めて彼は顔を上げた。
「よ、ようぜん」
「……なんですか」
「その、だな。あの、…えと、だから」
上ずっている声はちゃんとした言葉にならず、要領を得ない。
「…何ですか」
常にない低い声になっていた。
訊いても、嫌だとかそんなのは認めない、と強く思う。
だって、背中に回された両腕はそのままだし、何をどう間違ったとしても好きだと言って抱きついてきたのは彼の方なのだ。”恥ずかしい”くらいなら聞いてなどいられない。
ずっと、自分は我慢してきたのだ。ずっと”これ”が欲しくて、けれど先に手を伸ばして欲しくなったのは自分だけで。
彼は自分のことをそういう目では見ていなかったし、だから手に入れてはいけないものだと思って背を向けてきたのだ。
難しい理由なんてわからない、ただ欲しくて欲しくて仕方なかった。
彼の目を覗きこむと、思った通り嫌悪の色は見えない。
自分から好きだと言ったものの、恥ずかしくなってきたどうしよう、というところだろうか。
目元がやはり赤く染まって、そして大きな目も潤んで水の膜が張ったようになっていた。
もう一度、誘われるように赤い耳に唇で触れる。
「…ねえ」
「ひゃっ」
離れないまま耳元を柔らかく噛みながら窺うと、上がるのは聞いたことのない高い声。
声を上げた本人も自らの声に驚いたように目を見開いて、次の瞬間さらに頬が赤くなった気がした。
「お、おぬしなあ…!」
恥ずかしいのと弱いのとどっちも、なのかもしれない。必死に耳を押さえながら、下から睨んでくる目も先程より潤んでいて。
あ、なんか駄目だ、と思ったのと同時に呟かれた言葉が追い打ちをかける。
「…なんだ、その。急すぎるのではないかと思っただけで…嫌、では」
「え?」
「嫌では、ないよ」
ぎゅ、と背中に回されていた手の指先に今までで一番力がこもる。
「…………」
なんだこの人。いい加減にしてもらいたい。
――ああ、理性が吹っ飛ぶというのはこんな感じなんだな。
どこか冷静に頭で思いながら、気付けばいつかのあの冬の日のように、薄く開かれていた唇に自らの唇を重ねていた。
















































「……すっごい痛い」


ぼんやりと、薄暗い間接照明だけに照らされた部屋で。
隣で裸のまま布団にぐるぐるに包まって、掠れた声で現状を訴えてくる人の頭を撫でる。
小さい、頭。これも妙に手のひらに馴染む感覚だった。
「ようぜん、痛い」
「あー…さすがに男相手とか初めてで勝手がわかりませんでした。すみませんね」
「なんだその言い方!ちっとも誠意が伝わらんぞ!…った!」
咄嗟に上半身を起こそうとしてしまったのだろう、涙目で訴えてきた人は体を起こした際に体に走った衝撃に盛大に眉を顰めて、再び布団に突っ伏した。その頭を再度撫でる。少し汗で湿っているけれど、相変わらず艶を含んだ髪は指通りがよく癖になる。離し難い。
「……くそ、わしだって男相手なんて初めてだっつーの。ていうかなんか当然の如くわしが女役だし!なんで!」
「いや体格的に自然な流れじゃないですかね。僕、逆になるのとか絶対に嫌ですよ」
「なんだと?!」
「え、ほんと無理ですし」
別に彼のことを女扱いしてるわけじゃなけれど、きっと相手を食べたいと思っているのは自分の方に違いない。
それなら食べられる方を組み敷ける方がいい。そっちの方が断然食べやすい、と彼が聞いたら一方的だと怒りそうな理由をつけて、”やっぱりどうにも美味しそうに見える”、と文句を言い続ける口に軽くキスを落とした。
「ん、」
ようぜん、と唇を合わせたまま小さく名前を呼ばれたけれど、そのまま押し当てるだけのキスをした。
彼の唇は薄いけれど、普段の凛とした雰囲気からは少し想像できないものを含んでいる。味にすれば、正直に言うのもなんだか気が引けるけれど”甘さ”、と形容するのが一番近い何か。
その力任せにしてしまえば簡単にくずれてしまいそうな、淡い感覚を食べるように、深くならないキスを繰り返す。
そうやって唇を何度か合わせて離れるとずっと文句を言っていた口は大人しくなった。
「…ずるいぞ、おぬし」
困ったように笑いながら、彼の頭を撫で続けていた手の甲に手のひらを重ねてくる。絡む指が細い。
「のうのう、楊ゼン好きだぞー」
「そうですか」
「ああ、好きだー」
同じ言葉を返すでもなくただ相槌を打っただけなのに隣の人はやけに満足そうで、にこにこと笑い続ける。
この分だと大丈夫か、遊びとは思われてないよな、とこれもまた彼が聞いたら怒りそうなことを思ってしまう。
いや、遊びで男に手を出すとか普通に考えたらないよな、ああ、わかってるけど。
それが認められない、と思っていた一因でもあるんだけど今となっては嫌悪も何もない。
……こうやって彼を抱いてしまって、果たして自分は彼とどうなりたいのかと考えてみれば。
キスするのも、触れるのも何故かと訊かれれば、やっぱり彼が目の前にいるからで、難しいことは何も言葉にならない。
彼といるといまだになんとも言えない、面白くないだとか、そういった苛々した気持ちになるのも詰まる所は、こんなにも彼が自分の腕の中にいるのがしっくりくるのに、彼には自分と出会う前からちゃんと彼の世界があって、家族がいて、友人がいて。決して自分だけのものにはならないからだった。
自分だって自分だけの交友関係があるけれど、こんなに執着しているのは彼だけなのに。
きっと、彼より自分の方が執着しているのに。
…だから、つまり。


「…………、い」
「え?」
「なんでもないです」


自分にしか聴こえないくらいの、小さな声で呟いてようやく、ようやく諦めた。
一番認めたくなかったのは、こんな歳にもなってそれがあまりにも幼い気持ちを伴う、強い衝動だったからだ。
今まで付き合った相手の誰にも感じなかった、我儘と強い欲を伴ったもの。
だから、つまり。






ごめんなさい、ずっと好きでした。






「……なんて言えるか!」
「うわっ、っていきなり何キレてんだおぬし!」
湧き上がる居たたまれない思いに、無意識に彼の黒髪をわしゃわしゃと少し強めに掻き混ぜてしまっていたらしい。横から”痛い痛い!”と抗議の声が上がる。
「あ、すみませんね」
「だから誠意がない誠意が!」
いや、一年も無視し続けていた相手に誠意を求められても、と返した言葉に”ひどい!”と喚くのを無視して。乱れてしまった髪を再度頭を撫でながら梳いて直していくと、喚くのを次第に止めて目を細めて気持ち良さそうにする。宥めると、途端に機嫌が直る様は、なんだか猫みたいで。
…そうか、猫か、と腑に落ちる。捕まらないと思っていたのに、気がついたらこうやって傍に来て丸くなっている、猫。
気まぐれな猫だとでも思えば自分の腕の中だけにずっと収まってなくても仕方ないんじゃないだろうか。
そうだ、仕方ない、仕方ない。…仕方ない、の、か?
たとえ仕方なかったとしてもちっとも面白くないのに変わりはない。そしてかなり、苛々するのにも変わりはない。
きっと、これからも苛立ち続けるのではないか、というのは確信に近かった。
何故なら今こうしていても、明日、また大学に行けばこの人が他の人に笑っているところを見なければいけない。…考えている傍から、苛々してくる。
「……ようぜん?」
髪を梳く手を止めて黙り込んだこちらを不思議そうに見上げてくる顔。
大きな目で瞬きをするその様はとても無防備だった。
今、すぐ傍にいることに何も疑問を持っていないのだ、と訴えてきて、胸の内がこれ以上ない程にちりちりと灼ける。


ベッドサイドの時計を見ると時間は深夜3時近く。
「あなた、明日の授業は?休みます?」
「朝起きて、出れたら出るけど。痛いし」
「1限目からですか」
「えーと、2限目からだな」
「そうですか」
どっちにしろ、それなら少しはゆっくり眠れるだろう。
「うわっ」
「…朝、起こしますから」
彼が自分を好きだと言うのはいまだに現実感がないが、自分のこんな気持ちも明日の朝くらいまでなら思い知って貰わないと割に合わない。
彼の額に掠めるようなキスを一つ。
部屋の明かりを全部消すと有無を言わせずに、隣の存在を閉じ込めるように腕の中に抱き込んでから目を閉じた。








































*     *     *     *     *     *     *     *


























のんびり更新で初のようぜんさんサイドで、ダイジェストでしたがいかがでしたでしょうか。
そしてどうだ、やっぱりわたしはピロートークが好きだ、ということでピロートーク。


にしても乙女しかいねぇぞ!助けろ!!(笑)
もう幸田の頭の中が少女漫画なんで仕方ないです。
あとこれようたでやる必要あんの?なんで?とか書いてる本人が一番思っているので突っ込まないで下さい(^□^)


そんでちょっとそっちのけのお題の耳、ですが。
すーすは耳、もともと弱いけど、なんていうかそれよりもようぜんの声にノックアウトで我に返って恥ずかしくなっちゃったという話でしたよ。あいつの低音はやばいですからね。


今回のお話もみなさまにちょっとでもお気に召して頂ければこれさいわいヽ(´▽`)/
次はまたすーすサイドになりますよ。のんびーり更新ですが続きますよ(まぁ毎回ちゅーしてるだけの話だけどな!!)


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いくらでも寝れる

最近は、新しく飲み始めたお薬の影響なのかなんなのか毎日えらい眠いです。
もとから眠いですがさらに眠いです。ねむー。


*お仕事近況^^
3月末に今働いてる新しいお店を開いてから2カ月近く経って、ようやく落ち着いてきたかなーという感じです。
しかしオープンしてからよたっこさんやら昔の同僚やら色んな人が訪ねてきてくれて嬉しいです。
また最近お店の棚仕様を半分以上変えまして心機一転だぜ。
みんなわたしの城に来い☆


*ドル活^^
シャイニーが日本にくるのでそわそわしてます(6月に日本語でデビュー)(それについては深くは言うまい)
地味に応援しようと思います。じょん…(*´ェ`*)
シャイニー好きになって、基本飽きやすいけど、はまるととことんはまってしまう性格だということをつくづく思い知らされました。


*しずちゃん好き過ぎて生きるのつらい。
ていうか中二病のやつにはまり、気付いたら中二病のやつの(同人的な)目線でしずちゃんの魅力に…なんていうか…ほらアレだ…ギャップ萌えだ…。
しかしアレ公式がアレだろ?笑
なんということだ…5927通り過ぎてまさかの4213にはまった。
いやその傾向はあったんだけどなんという…
5927どうこう言ってたけどようた以外だとほとんどノマカプしかはまってなかったのでべっくらした。
やはりはまるととことんはまってしまうおたく気質☆
いやいやこれ以上好きなもの増やすと大変だって…マジで…
これ熱冷めんのかな…(半年過ぎて冷めなかったら相当続く)
※ようたは殿堂入りですから。ゆるぎないですから。






拍手ありがとうございました!!^^
超嬉しいです!
ぽちぽち押してくださった方、コメント下さった方ありがとうございます♪
以下拍手お返事☆


>キスお題にきゅん~の方
わぁわぁありがとうございます!!((w´ω`w))
よかった、と言って頂けて本当にうれしいです(T□T)
というか、小咄全部読んで頂いたということでありがとうございます~!
(そんなありがたい方がいらっしゃるなんて…涙出ます嬉しいです(T□T))
楽しみに、と言って下さる方がいると本当に書く気が沸きます♪
のんびり更新にはなりますが、キスお題は続きを書いていきますので、よろしければ見てやってくださいね!
コメント本当にありがとうございました!


よーし続き書くぞー^^

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Co 27







※にょすー、パラレル高校生もの注意。
過去遺産。
初夏のおはなし。






























Co 27




















――――青い、夢を見た。
澄み渡る透き通った世界。
どこまで行ってもどこまで行っても広がるのは青。
明るいそれは、終わりがなかった。






















空を見上げて、小さな声で歌っていた。


仰向けになって見上げる空はいつもとは違って広く見える。眩しさに目を細めながら仰ぐと、どこまでも果てなく青が広がっていた。雲も見えない。見渡す限りが、青一色の世界。
コンクリートの床を背にしてのんびりと体を横たえていると、少し遠くの方できぃ、きぃ、と音が鳴っているのが聴こえる。古い扉が持つちょうつがいの音だった。半端に開いた扉は、風が吹くたびに音を立てる。
”――しっかり閉めてなかったのう……”
ちらりと見ただけで再び視線を上へと向ける。
まあいいか、誰が来るわけでもないし。
これぐらいの強さの風では、重くできている扉が閉まって大きく音を立てることはない。誰に気づかれる心配もないだろうと気楽に考えて聴こえた扉の音に目を閉じる。目を閉じてもなお、暗いまぶたに滲む太陽の光に知らず微笑んだ。
「……授業中だしのー」
ちゃんと高い網がついて安全に配慮された屋上は普段から解放されている。
しかし進学校という校風も関係しているのか、授業を抜け出して屋上に来るような生徒はほとんど見かけない。
少なくとも、こうやって自分が抜け出してくるときには、会ったことがない。
…まぁ、自分も授業に不満があるわけでもなんでもないのだけれど。
今日は気持ちのいい晴天だった。風が吹いていてもそれは冷たくもなく心地いいだけで、道端の草も花も明るくてきれいだった。単純だとは思うけどただそれだけであまりにも気分がよくなって、なんだか授業を受けるのが少し面倒になって。
こういうときは決まって空をただ見たくなる。青い世界に身を浸らせたくなるのだ。


下のグラウンドからは号令をかける音が、風にのってどこか遠くに聴こえる。どこかのクラスが受けているだろう、体育の授業。さらに遠くから、学校の外を車が走っている音が聞こえた。
空のちょうど真ん中辺りにある光。目を瞑ったままでいると、体にじんわりと暖かさが染み込んでいく。


「あー、これは…寝る…のう…」


そのまま暖かい陽射しを一身に受けて、ゆっくりと意識はまどろんでいった。






*     *     *     *     *           

           




それは、何度も見たことがある風景だった。


もうおぼろげになっても、幼い昔確かに走ったあの小道。
理由はなんだったのか忘れるほどに泣いていた。悔しくて、悲しくてただ走った。走って走って、辿り着いたのは知らない公園。無造作に伸びている雑草を掻き分けて、がむしゃらにジャングルジムに登る。
その天辺の上に横になって、見上げるとあったのは一面の、青。今まで見たこともないような、遠くまで広がる青があった。


青が、あった。






泣いていたことも忘れて上へと手を伸ばす。届かなかったけど、青は体に吸い込まれていくようだった。






*     *     *     *     *






「――――……、…先輩」


ゆらゆらと心地よくまどろんでいた意識に、声がかかる。
目を閉じていても影が頭上を覆うのを感じ、誰かが傍にいると知覚したのと同時に意識は浮上した。
……誰かがいるとは思っても、少し低めの通るそれはよく知っている声だ。目を開けると、一面の青。空に重なるようにして、思った通りの人物がいた。
「…おう、楊ゼン」
「”おう”、じゃないですよ。何してんですか、もう昼休みですよ」
逆光でもわかる、少し呆れたように笑う、きれいに整った顔。
柔らかい線の少ないその輪郭は、実年齢よりもなんだか大人っぽく見える。
外見だけ見れば童顔の自分の方が間違いなく年下に見えるだろう、一つ年下の幼馴染。……そう、幼馴染みだ。小さく小さく息を吐く。
というより、いつの間にこいつはこんなにでかくなったのだろうか。高校一年生にしては無駄にでかいと思う。昔は自分よりも小さくて、笑うと花が咲いたようになって、あんなにあんなにかわいくて。
「……女の子みたいだったのに」
「先輩?まだ半分寝てます?」
「…いや」
呼ばれた”先輩”、という響きに苦笑した。
でも苦笑した原因は胸の奥の方に押しやって、ゆっくりと上半身を起こす。大丈夫だとは思うけれど、寝ていたときに制服のスカートがめくれてなかったかをさり気なく確認しながら。
「今日はすごく天気がよかったから、気持ちよくなってのんびりしようかと思っておったのだ」
「そんなことだろうとは思ってましたけど。あなた本当に屋上好きですよね」
くすくすと笑ってそう言うと彼は自分の横に座り込み、手にしていた購買のビニール袋からパンを取り出すと手渡してくる。
「食べます?お腹空いてても買いにいくのめんどくさかったんでしょう?」
「よくわかっておるではないか」
笑って受け取り、ポケットの中の小銭入れからお金を取り出そうとすると、僕が勝手に持ってきただけだからいいですよ、と制されたのでそのままありがたく甘えておくことにする。
彼は小さい頃からどうにも自分に対して甲斐甲斐しいというか、なんというか、子分体質である。こっちが頼む前に気を利かして何かと世話を焼く。
もとから人がいいというのもあるだろうけれど、小さい頃の上下関係とはなかなか変わらないものらしい。
しょうがない、と手の中に収まっていたパンに意識を向ける。
彼が持ってきたパンは、購買で売ってるパンにしてはレタスがたっぷりでチーズもハムもおいしい、お気に入りのサンドイッチだった。
続いて、もう一つ渡されたパンは厚めのチョコレートブロックが包まれているデニッシュ。つくづく自分の好みをよくわかっている。
サンドイッチにかぶりつくと、彼も隣に座って自分の分を取り出して食べ始める。
「…そのサンドイッチ、見たことない。そんなんあったか」
「ああ、新しく入ったんですよ」
「中身は?」
「鶏肉と牛蒡ですよ。気になります?次は貴方用に買ってきますよ」
他愛のない、笑いながらの言葉。
次っていつだ、と。そう思ったけれど、すぐ横にある笑う顔に何も言えずにパンと一緒に言葉を飲み込んだ。もやもやとした気持ちが、胸の端で漂っている。
「あ、先輩。担任の先生が探してましたよ。家に電話するとまたあとで面倒だろうから、気分悪くて遅れてくるって言っておきました」
「あー、いつもすまぬな」
「もう、全然悪いと思ってないでしょう。遅れてくるって言ったけどもう昼すぎですからね。ちゃんと先生と話しておいて下さいよ」
「はいはい」
「って聞いてます?もう先輩は…」
小言を呟きながらも、楊ゼンの口調は決して咎めるような響きではない。
楊ゼンとは小学校から同じ学校だった。学年は違ったけれど、彼は時々こうやって授業を抜け出すくせがある自分のことをかばってくれていた。
実際のところ、中学生、高校生になってからはそんなに授業を抜け出してないし、抜け出したとしても普段真面目にやっている分、周囲に怪しまれることもそんなになかった。…しかしそう思い返すと、物を盗ったりだとか驚かせたりだとかそういう悪戯はしていなかったけど、小学生の頃は今よりも好き勝手やっていたな、と思う。
それで担任の先生は楊ゼンの家とうちが近く親の仲がいいことも知っていたから、自分がいなくなると楊ゼンに居場所を知らないかをよく尋ねていた。そのたびに楊ゼンは事情を察して口裏を合わせていてくれていたのだ。そして後でこっそりと探しにくる。
”何やってるんですか”、”先生が探していましたよ”といつも呆れたように、笑いながら言って。それでも何故か、抜け出すのをやめろとは言わなかった。抜け出すと探しに来る。いつからか、毎度暗黙の了解でそれは繰り返されていた。


”そうだ、それは変わらないのに”


自分達はとても仲のいい友達だった。
家が近いこともあって、日が沈んで暗くなるまでよく遊んだ。
追いかけっこもかくれんぼもお絵かきも宝探しも、いつも一緒にするのは楊ゼンとだった。なのに小学校の学年が上がるにつれ、学校から帰った後一緒に遊ぶことは少なくなっていった。
中学生になってからはお互いの同性の友達と遊ぶのが増え、少し、彼の考えていることが遠くなって。廊下ですれ違っても今はあんまり話さない。
別に意識してそうなったわけじゃない。自然にそうなっていた。自分たちが幼馴染で一緒によく遊んでいただなんて、今は知っている人もそんなにいないんじゃないだろうか。知っているのは、きっと小学校から学校が同じ数人ぐらいだ。
そうやって昔から知っていることはそのままで、二人でする新しいことがどんどん少なくなっていく。懐かしいものになっていく。……いつからだろう、楊ゼンが自分のことを名前ではなく、”先輩”とそう呼ぶようになったのは。
あの頃は名前で呼んでいた…さっき見た夢の頃は。
何歳の頃かはもう既に曖昧になってしまっているけれど思い出せる、駆けていった先の公園、ジャングルジム、一面の青。
そうだ、小さい頃の楊ゼンは今では嘘みたいに泣き虫だった。でも、あの日は滅多に泣かない自分が泣いていたのだった。






「――――先輩」
呼ばれてはっとする。思った以上に物思いにふけっていたらしい。
「ああ、なんだ」
「訊きたかったんですけど、もう進路って決めたんですか」
「うわ。やなこと思い出させるでないっつーの」
「でも先輩の成績なら大体どこにでもいけるじゃないですか」
「勉強は嫌いではないが、できるなら楽をしたい」
「都内で進学ですか?」
「きけよ。うーん、まぁ。今のところそのつもりだが…まだ二年生になったばかりだし…」
言いかけて、言葉に詰まる。
実はあまり考えたくない話で、どこか向き合わずに逃げていることでもあった。
自分の進みたい方向は決まっている。
正確に言うと、”進路”のことを考えたくないわけではなく、それの延長線上にある”卒業”の二文字についてあまり考えたくなかった。
小学校でも、中学校でもいつでも卒業するのは自分が先。
今度こそ、こうやって一緒の学校に通うのも最後かもしれない。こんなに傍で、毎日を過ごせるのも。
自分の進みたい進路を選ぶのだ。彼と、楊ゼンと進む方向が別れてもそれ自体は本当に問題ではない。
ただ少し寂しいだけだ。ただの幼馴染みでしかない自分達の関係は、きっと高校を卒業してしまえばひどく曖昧なのは事実で、卒業の先にそんな不安定な関係があるならば、それが寂しいだけだ。
「…大学はまだ決めかねてるけど、今の時点では都内で進学するつもりでおるよ」
「そうですか。また決まったら教えて下さいね」
「まあ気が向いたら」
「何でですか。教えて下さいよ」
笑うと、そこで彼は時計を見ながら立ち上がった。
「もう少しでチャイム鳴りますから、先に行きますね。できるだけ午後は授業出て下さいよ?」
じゃあまた、と扉を開け屋上から姿を消す。
静かな空間に彼が階段を下りていく足音が響いた。完全に足音が消えたのを確認すると、またおもむろに体を地面に横たえる。
視界は、再び光の中に吸い込まれた。


「……敬語なんか使うなダアホー」


そうだ、言葉使いだって昔は敬語なんて使ってなかった。使わなくていいって言ってるのに。これももう今更だけど、なんであいつあんなに頑ななのだ。
ああつらい。今日はちょっとなんか、改めて考えると、つらい。あいつの言う通りに授業なんて出てやるか。
胸の内のもやもやがさっきよりひどい。
無心にじっと空を見上げ続けていると、あまりの眩しさに目を開けていられなくなる。
光の先にある、青。
そのまま空を目を細めながら見る。飽きることはなかった。
午後の始業のチャイムが聞こえたが、関係ない。授業には出ないことにしたし、もうしばらく陽射しが気持ちいい時間だし。
もやもやを吐き出すように、はぁ、と大きくため息をつく。
そのとき、視界の端を影がかすめて一瞬で消えた。


「あ」


それを視線だけで追うと、逆光に見えたシルエットで鳥だと認識する。勢いのいい速度で消えていった鳥の残像を食い入るように見つめる。逆光とその速さに色は把握できなかった。
青い空を飛ぶ鳥。今の鳥は何色だったのか、何故か気になる。
「まー、大方暗めの色だろうが…」
この国でそんな極彩色の鳥を見ることの方が少ない。
でも幸せの。幸せを運ぶと言う青い鳥。その行方を追いかける子供たちの話をふと思い出しただけで。
「…そういや似たような話もあったよな……」
青い鳥ではなくて、青い花。
頭の中に名前もわからない、青い花が浮かぶ。自分にとって、それはかわいらしい小さな野草のイメージ。
小学校の頃、図書館で見た本を思い出す。遠い時代の物語だ。物語の中で、少年は夢に青い花を見た。その青い花には手を伸ばすが、手に入れることはできないまま夢が終わる。それから何度も青い花の夢を見るのに、どうしても手に入れる直前に夢から現実に戻ってしまうのだ。
もう話の全てのあらすじを思い出すことなんてできないけれど、その話を読んで泣いたことは覚えている。
その物語が実際に何を言いたかったのかなんて関係なかった。ただ、少年が青い花を手に入れられないことが悲しくて仕方がなかった気がする。
その話をしたら、近くの大人の誰かが、その青い花は“現実には到達することができない、理想への、憧れの象徴”みたいな内容のことを言っていた。小学生だった自分にはその人が言ったことは難しくてよく理解できなかった。ただ自分のことを丸ごと否定された気になって、悔しくて、悲しくてさらに泣いた。
「なんで、青色なんだろう……」
ふと思う。
手を伸ばして、中々手に入れられないという、その色。


”だって、他でもない、青が。青がほしかったのに!”


悔しい、そんな結末許せるわけがない。
腕を上げて手のひらを、空に向かって出来る限り伸ばしてみる。
白い光と、薄く伸びる白い雲と、澄み渡る青がある。やっぱり、遠い。屋上に来て普段より空は近くなったのに、実際に近づいた距離はほんの少しだ。まだ遠い。
手に入れられない象徴なのは、こうやって見えるのにどうしても遠い空の色だからだろうか。


時が流れる中で、なくすものは、たくさんある。
自分の名前を呼ぶ響きであったり、遅くまで遊べる関係であったり、壁のない空気であったり。
変わらない色と、変わっていく色。


自分にとっても、それは、手に届かない色だろうか。






*     *     *     *     *

    




しばらく、ジャングルジムの上にいた。
横になったまま、ゆっくりと流れる白い雲を見ていた。長い間空を見続けていた為、細い鉄の棒が背中の骨に当たって少し身体が痛くなっていた。でも、まだもう少し。体にまだまだその色は吸い込まれていくみたいだった。
とっくに涙は乾いていた。……泣いていた理由も、思いもどこかに吹き飛んでいた。
こんな色を知ったのは初めてだったかもしれない。
これは、なんという色だったんだろう。
何色?
何色?
見たことがない。
……これだったら、不可能はないように思える。手は届かないけれど、確かに自分はその色を手に入れているように思える。






「――――ぼう」
下から名前を呼ばれた。横になったまま視線だけでそっちを見ると、息を切らして心配そうな顔をした男の子が見える。
「よかった。やっと、見つかった」
「ようぜん」
「みんな、さがしてたよ。ぼう、急になきだしてどこかに行っちゃったから……だいじょうぶ?どうしたの?」
彼もジャングルジムに登ってくる。天辺に寝て占領している自分を見て、途中で登る足を止めた。
隣にきた顔が瞬きを繰り返す。
長い睫毛の奥に、どこまでも吸い込まれそうなそれ。
あった。ああやっぱり。やっぱりこれだったんだ。
「空、きれいだったんだ」
「そら?」
「……ようぜんも、ねそべって見てみて」
体を起こして、場所を譲る。彼は素直に従ってジャングルジムの天辺にまで登って体を横たえて、空を見た。
透き通る水晶に映る、空。
「…どう?」
「……うん」
他に言葉はなかったけれど彼が静かに、確かに頷いたのを見て、満足だった。
きれいだった。すごくきれい。ようぜんみたいだったんだよ。そう言うと彼は驚いたのか目を丸くして、それから少し照れたように、とても嬉しそうに、綻ぶように笑った。












*     *     *     *     *






吹く風が、肌に心地いい。
夏が来る前の空気の中にいた。
どこまでも透明に思える、涼やかな。
それは通り過ぎる、一瞬の季節と季節の間。


思えば、楊ゼンが自分を探しにきたのはあれが初めてだったかもしれない。
なんだか妙な既視感を覚え笑った。あの日もこうやって空を見ていた。
今日は悲しいこともなく、ただ気持ちいいだけの日だったけど、いなくなったら彼は探しに来た。でも、似たようなことの繰り返し。探しに来てくれても、“一緒に帰ろう”とは言ってくれない。いい加減、一緒に帰りたい。一緒に歩きたい。今、何が好きなのか。もっと知りたくて、単純に知らないのが寂しい、だから。


…彼の応えが自分が望んだ、そのものではなくても。
自分のそれは遠い物語ではないと思う限り、諦めてやるものか。
だって、手を伸ばせば触れられる場所に彼はいる。












小さい声で、歌う。
空を見上げながら、知らず微笑んだ。
ポケットから携帯電話を取り出すと電話をかけようとしたが、“今は授業中だ”と思い直して、メールを打ち始めた。短い文を打って、送信ボタンを押す。
携帯電話を硬質の地面に放り出すと、目を瞑る。
「エネルギー充電だのう…」
伸びをして午後の光を浴びていると音が鳴った。放り出した携帯電話を見ると、授業中だったのにも関わらず、ちかちかとメールの受信を知らせるランプが点滅したのを見て笑った。


「見てろよ、ダアホ」


絶対、手に入れてやるからな。
そうだ、夏が来る前に絶対だ、絶対。


もう一度空を見上げて、遠くても掴むように両手を伸ばした。










































*     *     *     *     *     *     *     *














もう何年か前に書いた話です。
今も文章拙いけど、昔の方が本当に文の書き方が拙いのでちょいちょい手直し。
そんで。
ずいぶん前になりますが、別の学校図書室もの小咄を書いた際に、ようぜんにすーすのことを「先輩」と呼ばせたところ、ちーさんに「なにこれ恥ずかしい!」みたいなことを言ってもらえたので、あえて書きなおすついでに今回もようぜんに「先輩」と呼んでもらいました。
どうだこっ恥ずかしいだろう。


ちなみに、やっぱり恋を知った少年は理性との戦いだぜ、みたいな感じで補完してもらえると大変助かります(だいなし)
たぶんね…このようぜんには書かれてないだけでやましいことがえらいあると思うんですよ…(爆笑)
へたれだとか言わないであげてやってください(^□^)


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